『イット・フォローズ』のデヴィッド・ロバート・ミッチェル監督の処女作『アメリカンスリープオーバー』が最高でした。青春映画の大傑作。
3度の飯をより青春モノ好きなワタクシとしましては、プールサイドで女の子2人が「今年の夏どうだった?」「去年と同じかな」って話す冒頭のシーンからやられてました。
アメリカは夏休みの最後にスリープオーバー(お泊まり会)をやる文化があるらしく、その、年に一度の「特別な夜」を描いてます。
何が特別って、特に何もないんですけど当の本人たちにとっては一大イベント。みんな「なんかあるかも...」と静かにテンションが上がってます。
ボンクラ男子が集まってエロビデオを観るグループがいたり、お酒なんて飲んじゃって女子会するグループがあったり、プールのある家で男女混合で大はしゃぎするグループがいたり、町の至る所で同時多発的にお泊まり会がおこなわれています。なんじゃその文化。
メイン4人の4つのエピソードからなる群像劇スタイルで、それぞれが夏の特別な夜を切り取るもんだから青春の増し増しで頭がクラクラします。
みんなやることがダサい!恥ずかしい!で、超キラキラしてる。
4人とも素晴らしいんですが、特にプールサイドでのマギーの恋が好きでした。
上手くいきかけて、ミスって、でも奇跡のワンモアチャンスがあって、という展開にもうやられまくったんですがラストの演出にうなりました。
朝方のプールでいい感じの2人が「ウォータースライダーを滑り終わったとこでキスしよう」って約束をして滑り始めます。
そりゃあ最高な曲がかかって熱いキッスを交わすのだろうよとワクワクしてたら、予想に反してモヤっとした感じで終わります。
一瞬肩透かしをくらったのですが、最後の台詞と「ポチャン」というプールに落ちる音だけでエピソードを終結させる演出力にしびれました。粋!!!
この映画、「特別な時間だって等しく流れるんで」と言わんばかりに淡々と進んでいきます。
誰一人としてスカッとしない。みんなモヤモヤが若干残る...けど超超爽やか。これって凄いっすよね。
わかりやすい爽快感がなくとも若者特有の甘酸っぱさがヒリヒリと伝わればもう青春なんすね。
エマワトソンがデヴィッドボウイをBGMにして車から身を乗り出すキラキラパッカーン的な映像だけが青春じゃないぞ!!という新たな概念がぶち込まれました。(もちろん「ウォールフラワー」も最高!!!)
人生経験の乏しさからみんなテクニックがなくてみっともないんだけど「自分はどこまで行けるんだろう」的な漠然と自分の可能性を試すかのごとく夜を彷徨うんですね。ため息が出ます。
プロムとかアメフト観戦とか、アメリカのこうゆうティーン文化たまんねえっす。
あと新年度が9月ってことは、アメリカ人にとって夏の終わり=別れと始まりでもあるんですね。日本の比じゃなじゃいくらい夏という季節が切なそう。
あとはエンディング曲の素晴らしさです。
エンディング曲の対訳が出て、映画の内容とリンクしてる時の感動たるやないので大好きなのですが(「ショートターム」のラップとか最高!)、この「The Saddest Story Ever Told」の歌詞の素晴らしさもマジで最高でした。あーこの曲をかけるための映画だったのかなと思うほど凄まじく爽やかな風が吹きました。ナイス選曲だぜデヴィッド。
なんか聴いたことあるなと思ったらHomecomingsが数年前にカバーしていました。なんというセンス。。ホムカミのカバーverもすんばらしいです。
The Magnetic Fields - The Saddest Story Ever Told
この映画、パンフレットが品切れしてるのですが
発行元であるグッチーズさんが「希望者が多ければ条件付きで増刷」してくれるらしいです。「!」マークを多用したメールを送ってしまいました。
9/25までとのことっす。
なんかソフト化も厳しいらしいのでせめてパンフは欲しい...と願ってます
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『アメリカン・スリープオーバー』のパンフレット増刷について – Gucchi's Free School(グッチーズ・フリースクール)